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暮らしを楽しむ 人とタオル|#008 一田憲子さん(フリーライター・編集者)

 

#人とタオル #INTERVIEW #特集 #読み物

 
暮らしを楽しむ人とタオル#008 一田憲子

伊織の活動を通じて出会った人たちや、私たちが「会いたい」と思った方々に、タオルを持って会いに行くインタビュー企画。

第8回は、ライター・編集者の一田憲子さん。これまで暮らしにまつわる本や雑誌企画を多数手がけてきた一田さんが、なんと伊織の定番タオル「non-pile(ノンパイル)」をご愛用いただいており、しかもカラーは白と決めているという噂を聞きつけ、そのこだわりについて伺ってきました。

一田憲子さんご自宅内

暮らしを楽しむ 人とタオル

#008 一田 憲子 フリーライター・編集者

インタビュー・テキスト:森香奈子/撮影:森川誠治

伊織のタオルと出会ったきっかけ

− これまでご愛用いただきありがとうございます!
まずは一田さんのタオル遍歴と、伊織との出会いを教えていただきたいのですが、タオルは昔からnon-pileのようなさっぱりとしたものがお好みでしたか?

30代の頃、インテリアについて勉強するためにセミナーに通っていたのですが、国内外のライフスタイルについて教わるなかで、「海外ではタオルはパイルのない麻のものが多い」というのを知って。昔はタオルといえば“ふんわり”という意識があったんですけど、その言葉で興味をもって買ってみたのがきっかけで、ふんわりタオルから脱出しました。

当時(約20年前)は毛足の長い綿のタオルが主流だったので、パイルのないタオルや麻のタオルはあまり手に入らなかったのですが、次第に世間でも「麻生活がオシャレらしい」と言われ始めてきて、新しいワッフル織りのタオルを見つけては使ってみました。

色々と試すなかで、海外のとある老舗リネンブランドのタオルと出会いまして。高価なものだったんですけど、そこのリネンタオルはとても丈夫で、水を通すと麻がどんどん柔らかくなって使いやすくなっていくのを体験したので、しばらくは気に入って使っていました。

でもあるタイミングで、買い続けるにはやっぱり少し高すぎるなと思い直して。一度買うと5、6年は使える丈夫さは魅力なんですけど、吸水性がより優れているようなタオルがないかなと探していたときに、伊織のタオルを知りました。

一田憲子さんご愛用のnon-pile ホワイト

− 実際使ってみていかがでしたか?

耐久性は麻のほうが高い気がしますが、綿100%は初めから水を吸ってくれる力がありますね。私が選んだのが白というのもあると思うんですけど、毎日洗ったとしてもどうしても汚れてくるのも気になって。1年に1回替えるようになりました。

− それを聞くと「白を選ばない」という選択もあると思うのですが、「タオルは白」というのはこだわりですか?

そうですね。家に持ち込む色って、自分が落ちつく色じゃないと嫌なので、そのあたりはすごく神経質かもしれないです。天然の麻色はいいなと思うんですけど、それにピンクとか水色とか黄色とか、色がついてしまうとなんか落ちつかない。ティッシュケースひとつとっても、カラフルなものは選ばず、黒や白を選んでいます。好きな色は昔から変わらないかも。

家に持ち込む色という意味では、ネイビーもいいんですけどね。ひとつ気付いたことがあって。麻のタオルと使い方は変わらないのに、白いタオルにしてから汚れが目につくようになったんですよね。それだったら汚れていく様子がわかったほうが安心だし、交換のタイミングもわかりやすくて清潔感を保てるのでいいかなと。あとタオルを干している風景も、真っ白なほうが気持ちいい。

non-pileタオルを干す一田憲子さん
non-pileを干すために購入したという折りたたみ式の物干し
▲ non-pileを干すために購入したという折りたたみ式の物干しはフランスのアンティーク。場所を取らずにバスタオルもゆったり干せる。

− 「薄手のタオル」というのもこだわりですか?

やっぱり1回使って濡れたままの状態でまた使うって嫌じゃないですか。できるだけ早くパリッと乾くほうがいい! 冬場の洗濯も、毛足の長いタオルだと1日で乾ききらないこともあるから。あと収納も場所をとらないからいいですよね。だってバスタオルとフェイスタオルがこんなサイズの箱に入るなんて、毛足の長いタオルだったら難しいですよね。

non-pileタオルを収納しているボックス
▲夫婦ふたり分のバスタオル・フェイスタオルもこの一箱に。

− 日頃のお洗濯について教えてください。

タオルは毎日洗います。以前はマグネシウム洗濯を取り入れていたのですが、最近は取材で出会った「洗濯のプロ」が開発した洗剤を使い始めました。今年の初めから使い始めたのでまだ変化はわからないですが、どのように違うかは楽しみです。洗濯については色んな人に取材をしていて、「40度ぐらいのお湯で洗わないと本当の汚れは落ちない」というのを聞いたのですが、うちの洗濯機はお湯洗いができないから、週に1度だけお風呂からお湯を引いて洗う方法を試しています。お洗濯に関しては色々と実験中。どうなんですか? 洗濯って。

<覚えておきたいお洗濯のコツ>
◎ 一番は「今日の汚れはその日のうちに洗う」を心がけることが大切!
◎ 皮脂によるタオルの変色やニオイには約40度のお湯での洗濯は有効!
◎ お風呂の残り湯を使って洗濯をする場合、洗剤の力が“湯の汚れ”に食われてしまうこともあるので、気になる場合は洗剤の量を少し増やすなど調整すればOK。

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覚えておきたいお助けクリーニング術

− タオルを買い替えるタイミングについて教えてください。

先ほどは1年に1回替えると話しましたが、実際は半年ぐらい経つと色が真っ白ではなくなってくるので、一度替えたくなるんですよね。でもそれはちょっと早すぎるかなとも思うし。かといって中途半端に8月ぐらいで替えてしまうと、なんとなく区切り悪くなっちゃうし。

早めに6ヶ月で替えてしまうか、少し薄汚れても我慢して1年間使うかは今も悩ましいところです。悩んでいる間にズルズルと使い続けてしまいそうなので、替え時は決めておきたいんですよね。

やっぱり「新年に新しいタオルに替える」というのが気持ちいいので、できればそうしたいなと思っています。

バスタオル用ハンガーにかけたno-pile


● 伊織の薄いタオルシリーズで「PLAIN PLAID」も使ってみていただきました!

PLAIN PLAIDを手にする一田憲子さん
PLAIN PLAID

すごい吸水性がいいですね! バッグの中に入れていてもそんなにかさばらないけど、本当はリニューアル前のPLAINPLAIDぐらい薄いほうが私の好みかな。今まで持ち歩くハンカチって手ぬぐいを使っていたので、かさばらないほうが好きなんです。あと個人的にフリンジは無くてもいいかな……見た目は可愛いけれど、洗いっぱなしで使うからフリンジがダマになっちゃうのが気になって。せっかくならキレイにキープして使いたいなと思いました。


一田憲子さんご自宅内

− 続いて暮らしのお話を。ずっと吉祥寺にお住まいなのですか?

東京に来て初めて住んだ街は下北沢でした。その後は(下北沢のある)井の頭沿線の街を転々と引っ越して、現在の吉祥寺に。私は兵庫県西宮市出身なのですが、地元の阪急沿線の雰囲気と似ているところを感じて。井の頭沿線ののんびりした雰囲気がよく、ほっとするんですよね。吉祥寺も今や人気の街になって人がとても増えましたが、私が来た頃はもっと素朴な駅でした。

吉祥寺のいいところは、街と住宅地がとても近いことだと思っていて。百貨店もあれば映画館もあるし何でも揃っていて、いずれも自転車で行ける距離にまとまっているんです。でも住宅街はわりと静かで、日常の買い物は吉祥寺で完結します。

− ライター・編集者である一田さん。どうして今の職業を選んだのですか?

文章を書くのは昔から好きでしたね。宿題の読書感想文や、人に手紙を書くことも好きだったんですけど、若い頃は「書く」ということと「仕事」をイコールにするのが難しくて。自分のやりたいことができる仕事が何なのかさっぱり分からなかったけど、大学を卒業したらまずは出版社に行きたいなと思いました。その頃私は家族と一緒に関西に住んでいたのですが、親からは「職場は家から通える範囲でないとダメ」と言われており、当時関西に出版社はほとんどなかったので、出版社で働きたいという夢を持ちつつ、そのまま言いなりで商社に就職しました。3年ほど勤めた29歳のとき、結婚を機に退職して上京しました。フリーライターへの道は、そこから始まりました。

一田憲子さん

− 30代・40代はどのように過ごしていましたか?

どこにも所属していないフリーというのは固定給というものが存在しなくて、ギャランティーで食べていかなければならないから絶えず不安でした。フリーライターになりたての頃は、まず何から始めたらいいのかも分からなかったので、実践しながら理解していくという感じでした。インテリア系のことがやりたいなと思っていたので、まずは本屋さんに行き、インテリア雑誌を見つけては、その出版社に電話して「初心者なんですけど、記事を書きたいです!」と正面突破する方法で、まずは会ってもらっていました。

初めは1ページ分の記事から始まり、少しずつ慣れてきた頃、「子ども部屋特集」を担当しませんかというお話をいただいたんですね。私はてっきり「この部屋に行ってきてください」と指示されると思っていたら「テーマに合った部屋を自分で探してきてください」と言われたんですよ。そのリサーチがとにかくめちゃくちゃ大変でした。

まずは自分の力を蓄えないと。そう思って様々なセミナーにも参加していました。そこで麻のタオルのことも知ったわけですが、勉強して知識が増えると、自分で企画が提案できるようになるじゃないですか。1ページいくらというフリーランスの世界で企画が立てられるようになると、ある程度まとまったページがもらえるようになって、自分の報酬も増えるという方程式ができる。

いかに自分で仕事を増やして、やりたい仕事をできるようにするかは自分の引き出しを増やすしかない、という感じでした。とはいえ、学びに行くのも費用がかかるし当時はお金もなかったのですが、それは後から回収する気持ちで「えいやー!」と投資していました。

一田憲子さんご自宅の様子

− 自己投資の30代。どこかでターニングポイントみたいなものはありましたか?

フリーライターとして実績を積んでいくと、1コーナーを企画するだけでなく、1冊まるごとできるテーマはありませんか? と聞かれるようになるわけですよね。

たとえば私が編集ディレクターをしている「暮らしのおへそ」について。

私がこの家に引っ越してきたのが17年前なんですけど、引っ越しすると人生が新しくなったような感じがするじゃないですか。当時もそれまでの夜型生活をやめて早起きするぞとはりきっていたんですけど、結局朝型生活に変えることはできなかったので、習慣を変えるのは難しいなと感じて。「習慣」をテーマに本を作りたいなと思っていた時にちょうど「1冊まるごと企画をつくりませんか」と声をかけてもらったのがきっかけで生まれたのが「暮らしのおへそ」なんです。以降、1冊まるごと任されるという仕事が増えてきて、「暮らしのおへそ」を立ち上げた6〜7年後に「大人になったら着たい服」を立ち上げたり、天然生活の別冊「暮らしのまんなか」というインテリア誌をまとめるようになったり。そうこうしていたら、「本を出しませんか」という話をいただくようになって、だんだんと自分の名前で本を出せるようになってきたという感じです。

だからパチンと一気に変わるってことはなかったんですけど、いいご縁がつながって今に至ります。

書籍・雑誌「暮らしのおへそ」「大人の片づけ」「暮らしに必要なものは自分で決めていい。」「書く力」

− 悩みごとや課題も、仕事を通じてプラスに変えているのですね。

「大人になったら着たい服」という本も、私はこれまで洋服を買うお金があったら器を買ってきたような人間なのでファッションのことはわからず、自分に似合う格好もわからなかったのですが、わからないからおしゃれな人に聞いてみようということで企画しました。実際に聞いてみると、おしゃれな人はみんな「普通の服でいい」と言うんです。普通の服こそコーディネートして足し算できるということを学びました。

器がずらりと収納された食器棚
▲フリーライターになった30代から、作家さんを訪ねて集めてきた器がずらり。日々の食事やホームパーティーなどでも一番よく使うのは大皿だそう。
片口のついた器
▲見た目の可愛さでつい選んでしまうという片口のついた器もたくさん。
たくさんの器たち
▲ 20年使い続けている漆器のセットは一番のお気に入り。30代のときに清水の舞台から飛び降りるつもりで買ったものだそう。
「良いものは長く使えたり、時とともに美しくなるものが多いですよね。」(一田さん)

− いま興味があるものはなんですか?

3年ぐらい前にカウンセラーを取材する機会があって、そのときに自分のことも診てもらったことがあったんですよ。そのときに「一田さんは365日24時間仕事のことを考えているでしょう。」「もし仕事ができなくなってしまったら心が折れてしまうから、仕事とは全く別のこともやったほうがいいよ。」と言われて。

その言葉をきっかけに硬式テニスを始めました。

昔、軟式をやっていたのでできるだろうと思っていたのですが、全然できなくて。それが悔しくて今は週1回のパーソナルレッスンに通っているんですけど、それがめちゃくちゃ楽しくてしょうがない。仕事のことを忘れて、ただひたすら汗を流すというのが心地良いんですよね。そして上達してくるのも嬉しい。

キッチンの一角

暮らしまわりのことを記事にしているから趣味と仕事の境目が曖昧というか。インテリアも好きだけど半分は仕事だし、その辺の線引きが難しいんですよね。暮らしの全てがネタになってしまうから、テニスのようなジャンルの違うことをするのはすごくリフレッシュになります。

これまでが苦しかったというわけではないけど、楽しみが増えて新しい風が吹いた感じ。

− これから新しく始めたいことはありますか?

実はジャズピアノをやりたいと思って。電子ピアノを買って少しずつ始めたところだったんですけど、コロナでレッスンがなくなっちゃったので今は中断。でもまた時間をつくって再開したいですね。

non-pileと一田憲子さん

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自分のものさしやルールに囚われることなく、自分の「心地よい習慣」を大切にしながら、誰かの心地いい習慣を見つけたら吸収したり、自分を見つめ直したり。

肩の力を抜きながらも、いざとなったら「えいや!」と飛び込んで、暮らしを楽しみ続けている一田さん。そんな一田さんのウェブサイト「外の音、内の香」のブログでは、読んだら真似したくなるような素敵な習慣が日々発信されています。https://ichidanoriko.com/daily

ご自宅にあるひとつひとつのものが洗練されていながらも、その空間がどこかホッと落ち着く気分になれたのは、それぞれの道具にきちんと居場所があって、大切に使われているからなんだろうなと感じました。

タオルにも、きっと持ち主の数だけ物語がある。この白いnon-pileは、一田さんご一家とともに、毎日気持ちよく暮らしているんだなと思うととても嬉しくなりました。


=プロフィール=

一田 憲子(いちだ のりこ)

OLを経て、編集プロダクション勤務後フリーライターとして独立。女性誌、単行本の執筆などを手がける。「暮らしのおへそ」「大人になったら着たい服」(主婦と生活社刊)では、企画編集から執筆までを手がける。2017年より、ひとりで取材から執筆までを手がけるウェブサイト「外の音、内の香」を主宰。https://ichidanoriko.com
近著に「大人の片づけ」(マガジンハウス)、6月1日には「もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと」(扶桑社)が発売予定。


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